学生コラム

防災と言わない防災

特定非営利活動法人日本災害救援ボランティアネットワークが実施している「わが街再発見ワークショップ」というプログラムがある。

日本損害保険協会、朝日新聞社、ユネスコなどの協力で、「わが街再発見ぼうさい探検隊」という名で全国展開しているプログラムだ。

このプログラムでは、地域の子どもたちに「街を探検しよう」と呼びかけ、子どもたちを「探検隊」に仕立て上げ防災拠点を知ってもらう。「探検隊」の子どもたちは、街を歩きながらさまざまな施設や人々を“発見”して、写真やメモで記録する。大人たちは、防災拠点を発見できるように誘導するだけだ。街の探検が終了したあと、マップを作り発表する。

このプログラムの特長は、子どもたちが楽しみながら防災について学ぶことができるという点だ。しかし「防災と言わない防災」の狙いとして、参加する大人たちが防災について学習できることだ。

プログラム実施前に、地域の防災拠点について事前に学習し、役所、警察、消防、また、地域の自治会や自主防災組織とも交流する。「子どもたちが活動するというので手伝いに来てみたら、防災が関係していた」と感じる大人たちもいると思われる。つまり、子どもたちよりも大人たちのほうが防災について学習していることになる。

災害に備えるためには、防災訓練が欠かせない。しかし、訓練の出席者の少なさが問題になることも多いだろう。訓練に参加してもらうためにどういった工夫をすればよいだろうと考えたときに、「防災と言わない防災」という言葉に惹かれた。

子どもたちが参加したくなる、大人たちは子どもの誘導をし、ついでに防災について学習できる。「防災」という言葉を前面に押し出さず、このプログラムのように『子どもたちにとって「街の探検」という「楽しい活動」とすること』、『大人たちは、子どもたちのために手伝いをするだけ』とすれば参加者を増やせるかもしれない。

また、大学生には一人暮らしの学生が多く、地域の防災訓練等に参加しにくいという面があると思われる。しかし、子どもたちの誘導をするボランティアとなれば参加しやすくなるのではないだろうか。「防災と言わない防災」という発想の転換で、このような問題をも解決する糸口になるかもしれない。